2020/09/20
エロスのなぜ。 イク感覚と依存をつくる身体の仕組み。脳内麻薬・エンドルフィン
【エンドルフィン】
エンドルフィンは脳の中で神経伝達物質として存在しています。オキシトシンが脳内以外にも、体中の組織で働いていたのとは異なり、エンドルフィンは脳内だけで働く出張のない本社勤めをしています。
貴方が仕事で頑張って目標に到達したとします。その達成感を感じるときに貴方の脳でこのエンドルフィンが働いています。
エンドルフィンはよく脳内モルヒネとして知られていますが、モルヒネの役割って知っていますか?モルヒネは麻薬です。それは鎮痛作用です。医療現場では手術の麻酔薬として、怪我や病気による痛みを抑えたりするときに鎮痛薬として使われます。
脳には体のどこかに傷があってそれを「痛い」と感じる場所があります。その痛いと感じなくするのがモルヒネの役割です。痛みを感じなくするだけであって、怪我で生じた傷が治るわけではないですよ。ある意味現実から目を背けさせるような甘やかし作用ですかね。
麻薬が悪いものとして思われるのは不適切な使用をされることによってその依存作用に苦しむからです。歴史を紐解けば麻薬によって国が滅び、戦争も起きました。
モルヒネは植物から見つけられました。一方エンドルフィンはヒト以外の動物にも認められます。そもそもエンドルフィンは豚の脳で最初に発見されました。そして子牛からも発見されました。ネズミをつかった実験で1分間に25m走らせたところエンドルフィンが分泌されていることがわかりました。「いっぱい走ったぜぇ」とそのネズミはランナーズハイになって気持ちよがっていたかもしれません。
エンドルフィンとはもともと「痛み」を感じさせないように神経伝達物質として脳の中で働いています。痛みという不快な感覚から身を守る生命としての叡智ですね。
脳の中の神経伝達物質には活性型と抑制型で分けられます。ドーパミンがやる気を上げる活性型として働くのに対し、そのやりすぎを抑えるために働くのがこのエンドルフィンです。
このエンドルフィンはモルヒネに対して6倍の鎮痛効果があるとされています。麻薬としてのモルヒネは植物から抽出されたものでしたが、エンドルフィンはもともと自分に備わっているものでそれが普通なのでしょうね。
エンドルフィンは脳内でただ痛みをブロックするだけでなく高揚感、快感、といった感覚を生み出します。報酬系でこのエンドルフィンは苦痛を乗り越えた後の多幸感をもたらしているといえます。誰かに嫌なことをされてもその後で幸せな気分にさせてくれたら痛みのことを忘れられますよね。
報酬系において、エンドルフィンは高揚感、快感、多幸感、陶酔感などとして表現される感覚をつくりだすことがわかりましたが、このエンドルフィンを分泌するには刺激が必要になります。その刺激は痛みのような苦痛です。
もっとも有名なのが「ランナーズハイ」これはマラソンランナーが長距離走ることで
苦しいはずなのに身体が高揚感を抱くようになる現象です。走り続けて生じた神経の興奮
をエンドルフィンが抑えようと働いているのです。
マラソン以外にも鍼灸治療は痛覚を刺激することでエンドルフィンの分泌を促しているそうです。
エンドルフィンは激しい苦痛でなくても好きなものを食べ、好きな人との性行為でも分泌されるようです。ただ性交渉はオーガズムを得た時、多量に分泌されるようです。
その結果、恍惚とした感じになりますよね。
SMもまた苦痛によりエンドルフィンの分泌を引き出す行為といえますね。
鞭、蝋燭、縄、激しい羞恥などその手段はたくさんあります。ものによっては抵抗や拒絶を示す場合がありますが、行為の前だからかもしれません。そうはいっても強要するのはいけませんからね。
ただ、このエンドルフィンにはよく知られているモルヒネと同様依存症が生じます。
アルコールや煙草のように報酬系でエンドルフィンの作用により快感、多幸感、陶酔感
が得られた際の刺激をまた求めるようになってしまいます。これには興奮をつかさどるドーパミンの過活動が原因といわれています。ドーパミンには記憶に働きかける作用があります、そのため刺激を思い出し、それを求めるような依存症が生じます。
SMには責めの種類がたくさんありますから、Mによってどんな責めか好きになるか、Sがどの責めをするかによって変わってきます。育てる楽しみがありますね。
【まとめ】
エンドルフィンは自分の脳で作られる麻薬である。
脳のなかで鎮痛作用と高揚感、快感をもたらす。
苦痛による興奮でたくさん作られ、報酬系における多幸感をもたらす。
エンドルフィンはランナーズハイの原因物質である。
食事、性行為など普通の刺激でも作られる。