2019/09/10
第2話 秘密公開調教クラブ1 奴隷 恵理
顔がわからない、男くさい息が立ち込める中で
この雰囲気には到底逆らえなかった。
手を引かれ、一段ずつ階段を昇る。鼓動の高まりとともに
大勢の前にたつことなんて今までなかった。
学園祭での演劇の時以来。あの頃はお姫様役だったから。
だれもからも大切にされ、愛される全貌の的。
今は違う、鼻息荒い、男たちの前、求められることはただ一つだけ、
女
少し安心した。観客の視線の先は自分でないからだ。
視線を集めているのは目隠しされ天井から吊るされている裸の女だ。
さっきまで恵理にとってその女は遠い隔たりのある世界にいた。
欲望むき出しの観客の中心で、他人事のように被虐な女を眺めていられた。
軽蔑すら感じた。
つい先ほどまで。
いまは違う、手の届くところに女がいる。「わたし、同じ場所にいる」
目の前に恥ずかしいこの女の姿がいる。
これからこの女に起こることへの期待と、自分へもふりかかることへの恐怖が自分の中で入り乱れる。
男が入ってきた。背中のライトがまぶしくて顔がよく見えない。
背が高く、筋肉質。手が大きくて恵理の顔を覆い隠せそうなくらい。
何も着ていない、彫刻のような男の肢体、
股間をわざと視界からはずしたとき、恵理は男の裸を意識する自分を恥じた。
生贄の後ろにそびえ立つ巨体
背後に殺気を感じた生贄からは、目を覆い隠されて何も見えない。
自分が殺される瞬間というのはこう感じるものか
眼元がわからなくても、感じていることが何なのか、口元から伝わってきた。
不安から恐怖へ
屈辱、憎悪、後悔、絶望
女性としてもてはやされていたときの尊厳が、
筋肉の塊と息を荒げた狼たちによって踏みにじられる。
視界も、身体も、心も、全ての自由を奪われて、何も抵抗できない
全てがなされるがまま
生贄に与えられた唯一の選択肢、それは
放棄